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最近一般の方にお菓子を教える機会が増えて、
「小麦粉の代わりに米粉でも作れますか?」
という質問を何人かの方からいただきました。
仕事ではあまり米粉を使わなかったので、ちゃんとお答えできるよう色々調べて検証したところ、結論から言えば
・米粉の種類/銘柄によって仕上がりが違う
・そのまま置き換えると水分量が足りない場合がある
です。
アレルギーやグルテンフリーなどの理由で米粉を選択される人も多いと思うので、ここでは小麦粉の何割かではなく、全量を置き換える前提で話を進めます。
<米粉の種類について>
洋菓子づくりで一般的に使われる米粉は、うるち米を粉にしたものです。
同じうるち米を粉にしたものに和菓子で使う上新粉がありますが、製粉法が違って粒子が粗いです。
(もち粉・白玉粉は原料がもち米です)
米粉には「パン用米粉」と「製菓用米粉」がありますが、粒子の大きさが違います。
粒子の大きさがパン用>製菓用なので、お菓子にはより粒子が細かい「製菓用米粉」を使います。
(パン用でもお菓子によってはできないこともないですが、グルテンが添加されているものがあるので注意が必要です)
<製菓用米粉ならなんでも使えるか>
以前、いつもの店で買った米粉でお菓子を作ってみたら、小麦粉とはちょっと違うものの普通に作れました。
でもそれがなくなったから別の店で買った違うメーカーの米粉で作ったら、出来上がったのは全然別もの。
作っているときにすごく感じたのは、粉の吸水性と粒子の大きさが全然違うということです。
吸水性が違うから出来上がりの生地の固さもオーブンでの伸びも違うし、粒子の大きさが違うから仕上がりのきめの粗さも違います。
それからこれ以外にも、米に含まれる2種類の澱粉のうち、アミロース(粘りの強さ)の含有量も商品によって違うようです。
そこでいくつか使った中で、差が大きかった2種類の米粉でどのぐらい仕上がりが変わるかを検証してみました。
<同じレシピを違う米粉で作って比較検証>
今回比べるのは、
・ミズホチカラ製菓用米粉(富澤商店で購入)
・波里 サクッと仕上がるお米の粉(近所のスーパーで購入)
です。
まず、この2つがどれぐらい吸水性に差があるかというと、
粉と水を1:1で混ぜ合わせたもの。
ミズホチカラ(左)はすくっても跡が残らない程度のゆるさ。
お米の粉(右)は保形性がある固さです。
それから粒子の大きさですが、
上:薄力粉 左:ミズホチカラ 右:お米の粉
粒子が細かいほどダマになりやすいですが、ミズホチカラ(左)は固まりやすく片栗粉のような手触りで、お米の粉(右)はふるわなくてもサラサラです。
ちなみに量が違うように見えますが、3つともグラムは同じです。
この2種類の米粉を使って
①スポンジ生地
②シュー生地
③クッキー生地
④パウンド生地
をそれぞれ作って比べてみました。
①スポンジ生地
薄力粉で作った共立てのジェノワーズ。
使う薄力粉の種類で±3mmぐらいは高さが変わりますが、きめが細かくて高さがあり、ふんわりしっとりしています。
(網から外す時に表面が剥がれることがありますが、表面は使う時に切り落とすことが多いので、ここでは問題にしていません)
ミズホチカラ(上)は吸水性が低くグルテンが出ない分、焼く前の生地は薄力粉の時より緩めです。
一般的な薄力粉と同じぐらい膨らむので、これだけ食べると違和感はありませんが、食べ比べると少しだけ薄力粉よりきめが粗く、食べ応えがある食感です。
お米の粉(下)は、焼く前からもったりしていて、焼成後はあまり膨らまず、薄力粉より1〜1.5cmは低いです。
きめが粗くネチっとした食感で少しべたつきます。
ジェノワーズとは違って別立てで作るシフォンケーキ。
ジェノワーズに比べて生地の水分量は多い配合です。
薄力粉で作った場合は型のふちから少し盛り上がるぐらいの膨らみです。
薄力粉を米粉に代えると膨らみは薄力粉より控えめで、焼き縮みが大きいです。
ミズホチカラ(上)は型のふちから1.5cmぐらい、お米の粉(下)は2.5cmぐらい下までの膨らみ。
ミズホチカラは最終的に表面が平らになりますが、お米の粉の方は表面がえぐれるぐらい落ちます。
シフォンケーキはもともと別立てできめが粗いので、そこは気になりません。
ミズホチカラ(左)の場合、高さは薄力粉より低くなるものの、食感は薄力粉と同等かそれ以上にふわっふわです。
お米の粉(右)の方は、さらに高さが低く、少しベタついてねちっと感があります。
②シュー生地
薄力粉で作ったシュー生地。
シュー生地は、糊化した澱粉生地に卵で水分を足して作ります。
米粉も大部分が澱粉なので、シュー生地は作れるはずです。
ミズホチカラ(左)は薄力粉と大差ない仕上がり。
食感も言われなければ米粉か薄力粉かわからないぐらいです。
一方お米の粉(右)は、空洞はできるもののあまり膨らみません。
沸騰した水分に粉を入れた時点ですごく吸水し、固さ調節の卵を多めにする必要があったので、生地のバランスが崩れたのかもしれません。
③クッキー生地
薄力粉で作ったアイスボックスクッキー。
生地の水分は卵黄のみです。
米粉に変えると、吸水してもギリギリ生地はまとまりますが、筒状に成形するのに時間がかかって中心に空洞ができやすいです。
焼成後はお米の粉(右)は表面に細かく亀裂が入り、ミズホチカラ(左)は表面だけでなくフチにも放射状に亀裂が入ります。
グルテンがないので両方サクサクでほろっとした食感になりますが、ミズホチカラ(左)は粒子が細かく口の中ですぐに溶ける感じなので、お米の粉(右)の方が食べた満足感があります。
④パウンド生地
バター・砂糖・卵・薄力粉を10:9:10:10の割合で、シュガーバッター法で作ったプレーンなパウンドケーキ。
ベーキングパウダーは使用していません。
ミズホチカラ(左)は薄力粉を使った時と同じぐらい膨らんでいますが、表面の亀裂が多め。
お米の粉(右)は比較すると膨らみは小さいですが、これ単体で見ると問題なく仕上がっています。
どちらも普通にできましたが、お米の粉(右)の方がしっとり感や濃厚な感じがあるように思います。
食感は好みなので、パウンド生地の場合はどちらの粉がいいというのはありませんでした。
今回は同割ですが、バターに対して卵が少なめのレシピだと、水分量が少なくなるのでまた変わってくると思います。
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同じ米粉と言っても、商品によってかなり仕上がりに差が出ました。
ミズホチカラは、製菓専用なだけあってオールマイティーに使えますが、バター系のある程度重みや生地感が欲しいものには少し物足りないかもしれません。
お米の粉は、お菓子と料理両方で使うことを想定しているようで、作るものを選びます。
きめの細かさやふわふわ感が求められるスポンジ生地には向かないものの、バターが主体の生地には相性がいいと思いました。
シュー生地の場合は最後の卵ではなく最初の水で水分量を調節したら使えるかもしれません。
近所には波里の粉はこれしかありませんでしたが、この会社のHPを見るとお菓子専用粉も出しているようです。
商品による差は他にも、焼き色のつきやすさや表面のしっとり感といったところに現れたり、
グルテンの骨格がなくて生地の支えが不十分だったり、しっとりしすぎてベタついたり、澱粉の粘りが出過ぎたりといったデメリットの方が目立つ場合もあります。
置き換えでも概ね作ることはできましたが、作る際は
・製菓用の米粉を使う。
・スポンジ系にはなるべく粒子が細かく吸水量の少ない米粉を使う。
・吸水量は商品によって違うので、うまくいかない場合は水分量を少し増やす。
以上の点を気をつけて試してみてください。
※今回の配合は全てオンラインレッスンで学べます
基本のジェノワーズ 基本のプレーンシフォンケーキ 基本のシュークリームとカスタードクリーム 基本のアイスボックスクッキーと絞り出しクッキー 基本のパウンドケーキ(カトル・カール)ジェノワーズの作り方(蜂蜜の風味の方が勝ってしまうので、今回の検証では蜂蜜ではなく水飴を使用)
シュー生地の作り方
アイスボックスクッキーの作り方